)のVAL|SUBJのリストの要素は一つしかない、ということ、および親のSUBJの値は空のリストになるということです。また、COMPSが空であるというのも重要なのですが、これは文法を書いているうちにわかってくるでしょう。ボトムアップにパーズすると考えるならば、親をつくるために、ある左側の子供と右側の子供ができていたとして、
と左側の子供を単一化
と右側の子供を単一化
と
) が与えられます。
のHEADの四角い枠で囲んだ部分に注目してみてください。CASE nomという情報が増えています(heという単語には特にCASEの値は定まっていなかった。つまり、ボトムがはいっていた。)。これは主辞であるrunsのSUBJに書かれていた情報なのですが、単一化することにより、お互いの情報が一体化して、同一の素性構造をさすようになります。
また、その二重枠の部分 (
)ですが、これはheにもrunsにも書かれているため、お互い単一化可能かどうかのチェックになります。たとえば、heのかわりにtheyだったりしたら、NUMの値はplu(複数)になるので、単一化できません。つまり、they runsというのは非文である(人間が判断して文法的にみえない文のことを非文という)ということがチェックされているわけです。このように主語、動詞句でくっつく場合のスキーマの他、動詞と補語がくっついて動詞句をつくるスキーマとか、関係詞とくっつくスキーマとかいろいろあります。
ちなみにLiLFeSで書くなら、次のような感じになるでしょう。
head_subject_schema($LEFT,$RIGHT,$HEAD,$SUBJ,$MOTHER) :-
$MOTHER = (SYNSEM\LOCAL\CAT\VAL\(SUBJ\ [],
COMPS\ [],
SPR\ $Z),
DTRS\(HEAD_DTR\ $HEAD,
SUBJ_DTR\ $SUBJ)),
$HEAD = (SYNSEM\LOCAL\CAT\VAL\(SUBJ\ [$SUBJ],
COMPS\ [],
SPR\ $Z)),
$LEFT = $SUBJ,
$RIGHT = $HEAD.
ボトムアップにパーズすると考えるならば$LEFTが左側の子供としての入力になり、$RIGHTが右側の子供としての入力となり、$MOTHERが親としての出力と考えればいいでしょう。
二宮 崇 & 坂尾 要祐